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東北で被災した88歳のおばあちゃんのラップで泣け


 アウトサイダー・アートの専門ギャラリー「クシノテラス」(広島県福山市)のキュレーター・櫛野展正さんがFacebookで紹介していたラップ動画が超スバラシイので、紹介したい。

 このラップは、3・11で被災した東北の復興住宅からデビューした、昭和3年(1928年)生まれの88歳の藤沢匠子(ふじさわ・たつこ)さんが自宅で録音したものだ。




 Youtubeの紹介欄には、以下のような説明がある。


 藤沢匠子さんは去年(2015年)、仙台の復興住宅に入りました。
 仮設住宅­­にお住まいの時からよく集会所でのおしるこを食べる会「おしるこカフェ」に顔を出し­­くれるだけでなく、手作りのピクルスや漬物を差し入れてくれます。
 そんなある時、­「ア­タシの人生はすごいのよ」と語り始め、何日にもわたってその壮絶な人生をお聞き­しまし­た。
 ようやく話が終わりに近づいたとき、藤沢さんは「な、俺の人生、すごいべ­。だから­本にでもしようかと思って口にしたら、そんなの誰も読みたくないって言われ­た」と。
 そ­こで「ラップにしましょうか」と言うと「サランラップなら知ってっけど­
 そうして始まったのがこのプロジェクトです。



 以下の歌詞を見ながら、動画を再生してみてほしい。
 なお、「TATSUKO★88」は、藤沢匠子さんの芸名。
 フューチャリング(協力者)としてクレジットされている「ラップ★インクルージョン↓」は後述。


【俺の人生 Hip-Hop ver.
TATSUKO88 ft. ラップインクルージョン

青春時代は戦争だった 月謝払って弾丸つくった
戦闘機からは機銃掃射 命がけのdodge balls
仙台空襲じゃ焼け残ったけれど この世の地獄絵 目に焼きついた
あれ考えればなんでもない どんなことだって乗り越えていける

戦争終わってdance hall 通って知り合った彼氏とrun away
息子が生まれて半年足らずで うちの近くの広瀬川 氾濫
翌朝戻ればうちなんてなかった でも国からは支援なんてnothing 
あれ考えればなんでもない どんなことだって乗り越えていける

駆け落ちしてまでいっしょになった 旦那は5年であの世にrun away
息子は3歳 娘はbaby 育てあげた息子と 会社起こした
軌道に乗ったら 息子倒れた 脳血栓で半身不随
あれ考えればなんでもない どんなことだって乗り越えていける

仙台駅長に声かけられて 若いの率いてイベント仕切った
還暦過ぎても家事から何から 息子は寝たきり 声もでない
ある朝「ばんつぁんいらない」って 嫁に言われて家を出た
あれ考えればなんでもない どんなことだって乗り越えていける

震災起こって家まるつぶれ 仮設に入って何とかしのいだ
みんなが支援物資もらってるのさえ 気づかないくらいにisolate but
そのうちみんなの溜まり場になって 「赤ちょうちん出せ」って言われるようになった
なにくそって思えばなんとかなる どんなことだって乗り越えていける

去年の6月復興住宅 引っ越し 姪や甥が手伝ってくれた
助けてくれる人たくさんいる 悪口言っても何にもならない
それでもどうしても言いたいときは 俺の部屋入ってお茶でも飲め
ここではなにを言ってもいい ここから出たらそれ以上言うな

部屋には毎晩ひと集まる 食べたり飲んだり楽しいひととき
くよくよしてても病気になるだけ 何とかなるさと自由きまま 
ひとたよったり国のせいにしない 文句を言ったらそこで終わりだ
これまでの道のり考えれば どんなことだって乗り越えていける

くよくよしてても仕方がない 文句言ってもどうしようもない
なんとかなるさと自由きまま なにくそって思えばなんとかなる
やるって言ったら絶対やる それでダメならあばれるまでよ
そう考えればなんでもない どんなことだって乗り越えていける



●教育に毒されてない人が作る音楽やアートに触れてみよう

 おばあちゃんにラップで人生を語ってもらうというこのプロジェクトは、調べてみると、宮城県仙台市で震災後に一般社団法人まちとアート研究所を立ち上げた代表・門脇篤さんが仕掛けたものとわかった。

 門脇さんは、震災後の多様な表現を発信するアート・レーベルSTARTohokuを立ち上げ、誰とも比べることのできない絶対的体験を伝え残そうとしているのだ。
 こうした試みは、コミュニティアートと呼ばれるもの。
 アートを通じて社会的課題の解決に取り組もうとするソーシャルデザインの活動だ。
 興味があれば、『コミュニティ・アートプロジェクト』などの関連書籍を読んでみてほしい。

 前述の歌に協力している「ラップ★インクルージョン↓」は、現代アーティストでもある門脇さんが、さまざまな表現者とフューチャリングして展開していくコミュニティアート・プロジェクトの名前だ。

 震災の翌年(2012年)に、ラップ未経験者だった当時高校生(現・石巻の大学生)のラッパー・KOSUKEさんと門脇さんが「震災を伝えるラップ」を作ってみたことをきっかけに結成されたユニットだという。
 それまで音楽経験のなかったこのユニットは、結成以来、ライブや音源配信も積み重ねてきた。

 美術教育に毒されてない人たちが作るアウトサイダー・アートが魅力的であるのと同様に、音楽教育に毒されていない人たちの作る音楽もまた魅力に満ちている。
 藤沢さんの語った人生をライムにしたこの歌を聞いて、気づかない間に涙がこぼれてきた。
 強がってるライムの多いラップの世界に、このおばあちゃんは本当の強さを示してくれたのだ。
 本物の音楽は、人の心を揺さぶらす。
 アートは、社会を変える力を持っている。

 まだ知られていないソーシャルデザインは、たくさんある。
 それを拾って紹介する仕事を、真摯に続けていく価値がありそうだ。
 こうしたソーシャルデザイン/ソーシャルビジネスについて書ける媒体を、僕は今日も探してる。

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