北東北捜索犬チーム

「真に社会に役立つ捜索犬とセラピー犬を育てよう!」をコンセプトに、犬と人が一体となって、社会の安全、安心のために貢献することを目的として活動しています。代表の岩本良二さんにお話を伺いました。

 

 

-NPO法人を立ち上げたきっかけはなんでしょうか。-

東日本大震災がきっかけでした。当時から災害救助犬を飼っていたので、現地に入って行方不明者の捜索をしようと思い、チームのメンバーと共に現地の対策本部に赴いて、ボランティアで行方不明者の捜索をしたいとお願いしました。しかし岩手の現場を何箇所も回ったのですが、全て断られてしまい、なかなか現地には入れなかったのです。やっと現場に入れたのが3月19日、箱崎町(釜石市)の村長さんからの依頼で初めて現地を捜索しました。その後あちこちから依頼が来るようになり、全部で11回、青森と岩手を往復してご遺体の発見に貢献したわけです。その時、どうして現地の対策本部ですぐ受け入れてもらえなかったかというと、任意団体だったために信用してもらえなかったんですね。私も現地の対策本部の責任者だったら、「犬を使ってくれ。」と言われても、本当にちゃんとやってくれるかどうか、人命にかかわることですのでやっぱり断ったと思います。そこでNPOというきちんとした組織でなければいけないということを体験しましたので、翌年の2012年にNPO法人として認証を受け、現在まで続いています。


  

-岩本さんは元々青森県警の職員でいらしたんですよね。私も元警察職員なので、昔同じ職場にいたかもしれないというご縁があります。警察職員現役の頃から犬を飼っていらしたのですか。-

私は警察職員、技術職員として科捜研(科学捜査研究所)に勤めておりまして、その頃すでに犬を飼っていました。その犬が警察犬をやっていたんですけれど、災害救助犬をやってみないかと誘われまして現在の活動になりました。

-北東北捜索犬チームという団体名、チームという名称が印象的ですが、このチームという名前に込められた意味を教えてください。-

最初は7〜8人のメンバーが集まって「北東北捜索犬協会」という名前で活動を始めたのですが、いろんな意見がありまして「協会というほどの組織じゃないんじゃないか。」と批判される方もいました。それを謙虚に受け止めて、その時の自分達の立場を考え、もっと親しみやすく仲間が集まっているんだ、という意味を込めて「チーム」と名称を変更したのです。結果的にとても良かったと思っていますので、外部からの意見というものは謙虚に聞くべきだなと思いますね。

-これまで様々な現場で活動されていらっしゃると思いますが、一番大変だったのはどんなことでしょうか。-

 

 

 

一番大変だったなぁと思うことは、熊本地震の時に、イチゴという犬と一緒に、青森から熊本まで車で高速道路を乗り継いで現地に入り、捜索活動を行ったことです。私達は毎日いろんな方のご支援をいただいて訓練していますので、そういった方々の恩に報いると言いますか、責任もありますので、なんとか頑張って現地に行って捜索活動をしたいと思いました。行きは2日、帰りは4日かかりました。私よりもずっとケージに入って我慢していたイチゴの方が大変だったと思います。

-やっていてよかったなと思うのはどんな時でしょうか。-

災害救助犬の仕事について言いますと、災害の現場に行って住民の方から「どうもありがとう。」「青森から来たんですか!頑張ってください。」と言われると、頑張らなくちゃいけないと思います。
警察犬の仕事もしていますので、認知症の方を発見した時にご家族の方から感謝されますと、こういう仕事をやっていて本当に良かったなぁと思います。
行方不明者の捜索には、高度に訓練された犬というのは非常に有効なのですが、なかなかそういう犬が増えない、ということが私の悩んでいるところです。

-ここにいる犬はしっかり訓練されていてとてもお利口さんですが、一人前になるまではどれくらいかかるものでしょうか。-

うちのチームに、警察犬にしたい、災害救助犬をやりたいとおいでになる方がいらっしゃいます。その場合、その犬に適性があるかどうかを見ます。見てすぐ、ちょっと無理だなと思う犬もいますし、ちょっと練習してみましょう、となることもあります。4年くらいやってもだめな犬もいれば、1年くらいでどんどん上達する犬もいますし、そういう隠れた適性を見てあげます。捜索の仕事というのは、犬を叩いたり怒ったりしては上手くいきません。その犬自身、探すことが大好きで、ハンドラー(トレーナー/災害救助犬を誘導する人)との信頼関係があり、ハンドラーが探せと言えば、ちょっと怖くても頑張れる犬じゃなければいけません。
10歳過ぎると無理だと思いますが、5〜6歳でも適性があればクリアできる場合もあります。実際にそういう子もいます。捜索が好きで適性があるか、がポイントです。

 

-NPO法ができて20年、岩本さん達が団体を立ち上げてから11年の間に、当時では想像もしなかったような災害が起きました。社会におけるNPOや岩本さん達の活動に関する理解はずいぶん変わってきていると思います。その変わってきてやりやすくなった部分はどういうところだと思いますか。-

災害が多くなってきたということで、報道を通じて他県で起きた災害の状況がリアルに見られるようになりました。そういう中で犬の役割をマスコミでも取り上げるようになり、ずいぶん理解されるようになりました。私たちの活動も昔は災害救助犬と言っても盲導犬と間違われたりした、警察犬と災害救助犬はどこが違うのですかと聞かれたりしたものです。最近は理解していただけるようになったので活動をしやすくなりました。

-逆に変わっていない部分、変わって欲しいのに変わらない部分はどういうところだと思いますか。-

なかなか若返りが図れないことです。みなさんからたくさんの支援をいただき、頭が下がる思いなのですが、実際に私たちのチームに飛び込んでくれる人も犬もなかなかいないのです。収益事業としてやっていませんので、みなさんのご厚意の寄付金や募金で活動しています。お給料を払えるような環境ではないことが、なかなか飛び込んでもらえない理由かなと思いますので、いい方法があればどんどん取り入れてよりより組織にしていきたいと考えています。

-こういった広報を通じて多くの方に募金をしていただいたり、ボランティア=人の力といった形でご支援いただけるといいですよね。

 

 

 

-NPO法人って何ですか、と聞かれることがよくありますよね。いろんな組織形態がある中で、これまでNPO法人として活動されてきた岩本さんにとってのNPO、NPO活動とは何でしょうか。-

東日本大震災の経験からNPOの必要性を感じました。自分達の活動は社会的に認められている組織であることを知ってもらうために、「NPOの制服を着ること」が必要だと思っています。

-岩本さん、ありがとうございました。今日はたくさんのお話をお聞かせいただきましてありがとうございました。岩本さんの思いがたくさんの方に伝わり、共に支え合える社会となりますことを願いながら、今日のインタビューを終了させていただきます。ありがとうございました。-

聞き手/構成 斉藤 雅美
写真/小西 利治

インタビューの様子はYutubeでもお聞きいただけます。

特定非営利活動法人北東北捜索犬チーム
理事長 岩本良二
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電話&FAX: 0172-62-7213
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