財政破綻とは?財政破綻の定義と海外の財政破綻した例を解説

 財政破綻とはなにか? と問われて、ちゃんと答えられますか?

「国債発行額が大きくなりすぎて」
「国の借金の額が大きくなりすぎると」

 上記のような台詞から入る答えは、大体は間違いです。また財政破綻と経済破綻、国家破綻の区別はできますか? 財政とは、経済とは、国家とはなんでしょうか。

 実際に財政破綻したアルゼンチンやロシア、レバノンの例も参照しつつ、財政破綻について解説します。

 最初に結論。変動相場制+自国通貨建て国債の国は、どうやったって財政破綻することが不可能

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財政破綻の定義とは?

 財政破綻の定義とは、債務不履行(デフォルト)に陥ることです。つまり国や地方自治体が、借金の償還期限をオーバーしてしまうことを財政破綻、もしくはデフォルトといいます。

 ときどき財政破綻する国家があると、国家破綻という表現が報道されます。しかし国家破綻という表現はオーバーですし、リスクや危機を的確に表現してるとも思えません。
 財政破綻しても、国家の統治機構が破綻するわけではありません。

 またハイパーインフレを、財政破綻と定義する人がいます。ハイパーインフレは財政現象ではなく、経済現象です。よってハイパーインフレは「経済破綻」とでも表現するべきです。

 つまり財政破綻とは、国家破綻でも経済破綻でもありません。債務不履行・デフォルトに陥った状態が財政破綻の定義です。

海外で財政破綻した実際例

 実際に海外で、財政破綻した例を参照してみましょう。それぞれの国の前提条件ですが、ロシアは非常にユニークです。固定相場制の時代に、自国通貨建て国債で破綻しました。アルゼンチン、レバノンはどちらも変動相場制かつ外貨建て国債での破綻です。

 アルゼンチンやレバノンの例が、現代ではオーソドックスです。

アルゼンチンの財政破綻

 アルゼンチンは1816年にスペインから独立し、現在に至るまで8度もの財政破綻(財務不履行・デフォルト)を繰り返している、財政破綻の大ベテランです。

 2020年現在、またもデフォルトの真っ最中です。

アルゼンチン、ドル建て内国債でデフォルトへ-新型コロナ危機
アルゼンチンは、自国の法律に基づき発行したドル建て債券でデフォルト(債務不履行)を計画している。債務の支払いを年末まで先送りする。同国は深刻なリセッション(景気後退)に陥っており、海外の債権者との再編協議は進んでいない。

 記事では「ドル建て内国債」とありますが、この場合の内国債は「国内の銀行や金融機関が持っている国債」という意味です。ドル建てはもちろん、外貨建て国債となります。

 アルゼンチン通貨はペソですから、当然ながらドルの発行権をアルゼンチン政府は持っていません。発行権を持たない外貨での債務は、外貨がつきると財政破綻(財務不履行・デフォルト)を引き起こします。

レバノンの財政破綻

 レバノンも2020年3月9日に、レバノン始まって以来初の財政破綻を経験しました。9日に返済期限を迎える外貨建て国債は12億ドル。返済を延期することを、レバノン政府は決定しました。

 レバノンは1990年の内戦終了後、復興のために外貨による資金を借り入れるようになります。2011年から隣国のシリアで内戦が始まり、影響を受けて資金繰りが悪化していきます。

 現在の原油価格下落による影響で完全に外貨がつき、財政破綻(財務不履行・デフォルト)に至りました。

ロシアの財政破綻

 ロシアの財政破綻は、現代ではかなりユニークな例です。なぜなら近年の財政破綻の例と異なり、固定相場制+自国通貨建て国債で破綻したからです。
 ちなみに現代の財政破綻は、変動相場制+外貨建て国債です。

破綻する自国通貨建て国債、破綻しない自国通貨建て国債 - 進撃の庶民
「自国通貨建ての国債では、財政破綻(この場合はデフォルト=債務不履行、借金が返せなくなること)はあり得ない」と言われますが、実は自国通貨建ての国債でも財政破綻する場合があります。 無論、「絶対に財政破綻はあり得ない自国通

 固定相場制とはロシアの通貨であるルーブルの価値を、ドルが裏付けているという帰結になります。自国通貨の価値が外国通貨に裏付けられているので、自国通貨建て国債であっても、変動相場制における外貨建て国債の性質を持ちます。

 詳細は上記の記事からご覧いただけます。ロシアの財政破綻(財務不履行・デフォルト)は、冷戦終結後に起きたもっともユニークな財政破綻の例でしょう。

日本で財政破綻はあり得るか

 冷戦終結後以降に財政破綻した国は、10カ国以上あります。しかしロシアのような特殊な例(固定相場制+自国通貨建て国債)を除けば、ほぼ変動相場制+外貨建て国債での破綻です。

 これらの例を参照しながら、日本で財政破綻はあり得るのか? 解説します。

変動相場制+自国通貨建て国債

 最初に結論からいえば、日本の財政破綻はあり得ません。歴史上、変動相場制+自国通貨建て国債で財政破綻(財務不履行・デフォルト)した国家はありません

 変動相場制において、自国通貨建て国債を消化するのはほぼ国内です。消化するためにはある種の、行政機構や統治への信頼が必要です。安定した政府、という表現も可能です。
 不安定な発展途上国が財政破綻危機に瀕しやすく、安定した先進国が瀕しにくいのは、政府が安定しているからです。

 自国通貨建て国債は、自分たちの国で通貨を発行して償還、返済してしまえばおしまいです。変動相場制の国が、自国通貨建て国債で破綻しないのは当然です。

日本の財政破綻はあり得ない

 財政破綻の定義を「債務不履行・デフォルト」とするなら、日本の財政破綻は現在のところはあり得ません。日本に外貨建て国債は、存在しないからです。つまり「自国で発行できずに、獲得して返済しなければならない外貨建て国債」がそもそもないのに、どうやったら財政破綻できるのでしょう?

 存在しない借金で、首をつる人はいません。

地方自治体が財政破綻するとどうなる?

財政破綻した夕張市

 日本国内で財政破綻した自治体といえば、夕張市がもっとも有名です。夕張市は2007年から財政再建団体に転落しました。

 1960年代の最盛期には11万人の人口を誇りましたが、1990年代までに全ての炭鉱が閉山。夕張市は「炭鉱から観光へ」をスローガンに、多くのホテル・スキー場・遊園地を建設しました。結果は黒字化できずに、多額の債務を抱え込み財政破綻となります。

 財政破綻した結果、行政は債務返済に税収を充てるので、住民へのサービスは悪くなります。最盛期には11万人だった人口は、現在7000人ほどに減少したとのことです。

 これでは税収が少なくなり、さらに行政サービスが悪化して人口減少という悪循環です。

なぜ地方自治体は財政破綻するか?

 地方自治体が財政破綻する理由は明白です。通貨発行権を持たないからです。

 日本の地方自治体の県債や府債などは、ユーロの国債に似ています。通貨発行権がなく、よって財政規律を守らないと財政破綻を引き起こすのです。

 通貨発行権のある国の場合、自国通貨建て国債で財政規律の心配は無用です。理論上は無限に、国債を発行することが可能だからです。
 上記のケースでも当然ながら制約は存在し、インフレが行き過ぎると通貨そのものの価値が減少するため、国債発行の意味がなくなります。

 つまり変動相場制+自国通貨建て国債の国は、過剰なインフレにのみ気を配っていれば経済は回るということです。また理論上、財政破綻はあり得ないのです。

まとめ 財政破綻とはなにか

 日本では長年、国債発行額が大きくなりすぎて財政破綻する! といわれてきました。しかし歴史上、変動相場制+自国通貨建て国債で財政破綻した国家は存在しません
 もちろん理論上、財政破綻しようがありませんしね。

 財政破綻とはなにか? 財務不履行やデフォルトのことです。
 もし議論している相手が「インフレが行き過ぎて~」と主張する場合、それは財政破綻ではなく経済破綻でしょ? と言葉の定義を教えてあげましょう。

 日本には財政破綻の心配はないどころか、そもそも全て自国通貨建て国債であり、外貨建て国債が存在しません。すなわち財政問題がそもそも、存在しません。

 存在しない財政破綻におびえて、緊縮財政を推進し、デフレを長期化させ、夕張市のような地方自治体を見捨ててきました。デフレは自殺者を大きく増やし、日本国民の命を経済的に奪ってきました。

 このような悲しい事態にならないためにも、しっかりと「財政破綻とはなにか?」「日本に財政問題は存在しない」ということを学ばなければなりません。

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